- 受賞者
- 京都大学防災研究所 橋本 学 氏
- 研究題目
- 「だいち」合成開口レーダーで観測された京都盆地と大阪平野の地盤変動
- 掲載誌
- 自然災害科学, Vol.33,No.2,2014,pp.115-125.
- 受賞理由
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本研究は,盆地や平野の厚い堆積層下に伏在していて,従来の重力探査や微動観測探査,弾性波探査など線状測線に沿う地盤探査技術では必ずしも見つけることが容易でない未知の活断層を衛星搭載の合成開口レーダー観測データの干渉画像解析により,面的に検出することが出来ることを提示したものである。すなわち,堆積層中の地下水位変化によって生じる地盤の昇降をこの干渉画像解析により検出することで,伏在する未知の活断層を見つけることが出来るというものである。これは活断層地震の予測レベル向上,ひいては地震防災にも寄与するものであり,学術的にも高く評価されるものである。
以上の理由から,本研究論文は平成28年度日本自然災害学会「学術賞」に値すると評価された。
学会賞
平成28年度 学術賞
Hazards 2000国際賞
- 受賞者
- Subhajyoti SAMADDAR and Hirokazu TATANO
- 研究題目
- Where do Individuals Seek Opinions for Evacuation? A Case Study from Landslide-prone Slum Communities in Mumbai
- 掲載誌
- Journal of Natural Disaster Science, Vol. 36, No.1, 2015, pp.13-24.
- 受賞理由
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避難行動は災害による人的被害を軽減する上で重要である。この状況は斜面崩壊でも同様で,危険性の高い地域に住む人々が,地域の危険性を理解し,崩壊の前兆を察知し,タイミング良く適切な場所への避難行動がとれるかどうかがポイントになる。これを実現する上では,対象地域の人的ネットワーク,コミュニティのありようなどが大きな影響を及ぼす。本研究は,インドMumbaiの斜面崩壊危険地域に広がるスラム社会(コミュニティ)を対象に,行政が避難を促しても行動に移さない状況を改善するために,上記のような課題に関して調査したものである。具体的には,個々の地域住民が,最終的にどのような影響(コミュニティ内のグループ,カースト制,宗教,言語など)を受けて,避難行動を決定するのかについて調査し,その結果をまとめたものである。本研究成果は,Mumbaiのスラム社会という調査が容易ではない貧困地域を対象として,決してサンプルは多くないものの,貴重なインタビューデータの解析に基づいて,地域住民に適切な避難行動を促す上で重要な情報を提供しているという点で高く評価されるものである。
以上の理由から,本研究論文は平成28年度日本自然災害学会「Hazards 2000国際賞」に値すると評価された。
学術奨励賞
- 受賞者
- 京都大学防災研究所 本間 基寛 氏(現在,一般財団法人日本気象協会)
- 研究題目
- 確率情報を含む気象情報に対する住民の受容特性に関する研究
- 掲載誌
- 自然災害科学34巻,特別号,2015年,pp.11-21.
- 受賞理由
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極端気象現象は,災害を引き起こす可能性が高いが,通常レベルの気象予報に比べ予測は難しい。このような予測情報の伝達に際しては,可能性のあるリスクについて認識されると同時に,予測がどの程度の確率かについても理解されることが,繰り返される予測情報を健全に受け入れられるために重要である。本研究は,今後,必ずや問題になるであろう,極端気象現象の予測の伝え方について,設問がよく工夫されたアンケートを使い,様々な示唆を得ることに成功しており,有用な知見をまとめている。これらの成果は,地球温暖化等の影響により,今後も極端な気象現象が頻発することが予想される中,今後の防災に大きく貢献するものと考えられ,論文として高く評価されるものである。
以上の理由から,本研究論文は平成28年度日本自然災害学会「学術奨励賞」に値すると評価された。
- 受賞者
- 株式会社野村総合研究所 金融IT イノベーション事業本部 野崎 洋之 氏
- 研究題目
- 地震保険加入・非加入の選択行動と地震保険の募集実態に関する調査・研究
- 掲載誌
- 自然災害科学34巻,特別号,2015年,pp.87-98.
- 受賞理由
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本研究では,実際の地震保険の募集においては必ずしも地震保険付きの保険契約がデフォルトであるということを意識させるような説明方式がとられていないことをロールプレイング実験によって明らかにし,①地震危険不担保特約の開発や,②地震保険の保険金額割合の固定化など,政策提言につなげている。行動経済学の最新の知見を災害科学に応用しようとした意欲的な研究であり,学術的にも高く評価され,今後の研究の発展性が期待される。
以上の理由から,本研究論文は平成28年度日本自然災害学会「学術奨励賞」に値すると評価された。
これまでの受賞者一覧