日本自然災害学会長 挨拶

会長(2011年度~2014年度)
中川 一

このたび、日本自然災害学会の会長を仰せつかることになりました。薄学非才の身でこのような大役を務めさせていただくことに大変身が引き締まる思いでございます。今回の大震災を踏まえ、本学会での取り組みについてお願いを交えながら簡単に紹介させていただき、会長就任の挨拶とさせていただきます。

平成23年3月11日午後2時46分に発生したマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震は大津波を引き起こし、発生から100日にあたる6月18日現在で、死者15,451人、行方不明者7,692人という戦後最大の広域・複合大災害となりました。この大津波は、多くの家屋を流失させたため、仮設住宅の適地が不足したこともあって自宅を失った人たちが長期間の避難生活を強いられています。また、東京電力福島第1原子力発電所が被災して広い範囲が放射能に汚染され、地震や津波では被災していない人までも先の見えない避難生活を強いられることになりました。これらを合わせると124,600人の人々が現在でも避難されています。被災された皆様に衷心よりお見舞い申し上げますとともに、出来るだけ早期に元の生活を取り戻すことができますよう心より祈念いたします。

今回の東日本大震災では、被災地をどのように復興したらよいのか、放射能の汚染処理の問題も先が見えず、阪神大震災での復旧・復興のスピードと比べると極端に遅い感じがします。これまで私たちが多くの自然災害を経験し、得てきた知恵や知見、教訓といったものが、英知を注ぎつつも被災地の速やかな復興になかなか活かせていないもどかしさを感じます。私たちの生きているまちの有様や生活スタイルなどが変化すれば、自然災害も変幻自在にその姿を変えて私たちを襲い、これまで経験したことがないような形となって現れ災害をもたらします。今回の「想定」を超えた大津波がまさにそれだったのです。

日本自然災害学会は、自然災害科学の研究の向上と発展につとめるとともに,防災・減災に資することを目的として創設されましたが、いま、未曾有の災害を経験し、私たちが行ってきた取り組みが本当に役立ってきたのか、今回の災害をもっと軽減できなかったのか、強い反省と自戒が求められるとともに、これからの復旧、復興に大いに貢献することが求められています。

そこで、本学会では今村文彦前会長を委員長とする、東日本大震災に関する日本自然災害学会特別委員会を設置し、今回の難局に立ち向かい,早い復旧・復興の支援に共に尽力していきたいと考えています。このため、災害の調査分析・解析により、今までに積み重ねてきた対策等の検証を行い、中長期的な我が国での防災・減災のあり方について提言したいと考えています。これらは学会誌や学術講演会、オープンフォーラム等で今後公表される予定です。

さて、学会の役割の一つに会員へのサービスの向上があります。学会活動の一環として学術講演会を毎年開催し、学会誌「自然災害科学」を年4回,英文誌「Journal of Natural Disaster Science」を年2回発行しています。年会費の額の割には読者にとっても論文等を投稿する側にとっても大変お得だと思います。これらを定期的に発行するよう努力はしていますが、編集作業が滞って会員の皆様から色々な苦情が寄せられる時もあります。学会誌の内容のみならず、査読プロセスや発行時期など、会員の皆様にとって信頼に足る学会誌を発行すべく、今後とも努力していく所存です。

これらの学会誌の中で優れた論文等には学会賞学術賞や国際賞が授与されます。優れた功績には学会賞功績賞が授与されます。学術講演会での優秀な発表には優秀発表賞が授与されます。多くの会員の皆様が学術講演会に参加していただき、すぐれた論文等を学会誌にもご投稿いただき、これらの賞をどしどし受賞してほしいと思います。本学会にはこのような特典や魅力があることを改めてご紹介しておきます。

学会誌やホームページ等で自然災害等に係わる情報をタイムリーに発信していくことが会員の皆様への重要なサービスの一つと考えていますが、このような事業を継続的に実施していくには、財政的に安定した学会の運営が不可欠です。そのためには、会員の皆様の会費が滞りなく納入されることが最も大切です。

最近、会費の納入率が低下しています。また、複数年未納の会員の方も増えてきており、安定した学会の運営が損なわれつつあります。学会事務局では、会員の精査と会費未納入者に対して会費を督促しているところですが、会員の皆様には是非とも郵便局の自動振替をご利用いただき、確実な会費の納入にご協力くださいますようこの場をお借りしてお願い申し上げる次第です。それとともに、自然災害科学に興味がある学生、教員、職場の同僚等の方々に本学会への入会の勧誘をお願いする次第です。

本学会は、医学、農学、工学、理学、社会科学、教育学、情報科学など、他の学会とは違う災害に関する総合科学の学会です。東日本大震災の分析を通して、今後来るべき巨大災害に対して、どのような対策を講じればよいか、まさに、今、知恵を出すときです。本学会は学術講演会や学会誌を通して、その情報をタイムリーに発信してまいります。

今後とも、日本自然災害学会へご協力とご厚情を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

(京都大学防災研究所教授)

平成23年6月18日