学会賞

平成29年度 学術賞

受賞者
佛教大学 大邑 潤三 氏
研究題目
1927年北丹後地震における建物倒壊被害と地形の関係
掲載誌
自然災害科学,Vol.35, No.2, 2016, pp.121-140.
受賞理由

本論文は1927年北丹後地震における建物倒壊率と地表地震断層からの距離の関係を当時の資料を統計分析するとともに,推定した倒壊率と地形や表層地質との関係に対して深い洞察を加えた。評価は以下の4つの項目に纏められる。(1)地震火災による建物被害と強震動による建物倒壊被害を区別する必要があったが,本論文では世帯毎の被害状況にまで立ち返ることで,この難問をクリアした。(2)地表地震断層からの距離と倒壊率の定量的な関係を明らかにしたことは極めて重要である。(3)地表地震断層から10km以上の地点では,距離よりも地形条件の違いが支配的になる,という指摘は最も重要である。また,ボーリングデータ等も収集して,地形・地質条件を丹念に調べ,倒壊率と比較検討することで,地形条件の重要性を示した。(4)山田断層延長部の被害等,地下に一定の断層すべりがあったことが示唆される結果を導いており,地震学的にも重要な成果である。

以上,本論文は,活断層で発生する地震に対する防災へ重要な示唆を与えるのみならず,地震学・活断層学等の周辺の自然科学に対しても今後の研究に拘束を与える成果である。

以上の理由により,本研究論文は平成29年度日本自然災害学会「学術賞」に値すると評価された。

受賞者
長岡技術科学大学 上村 靖司 氏
研究題目
県別・市町村別の人身雪害リスクの比較
掲載誌
自然災害科学, Vol.34, No.3, 2015, pp.213-223.
受賞理由

本研究は,雪害が多い東北4県において2005年からの7冬季のデータを用いて,市町村レベルで比較が可能となる人身雪害リスクの分析を行い,これまでに明確でなかった人身雪害リスクを客観的に評価したものである。これにより,通常の労働災害のリスクを許容リスクとみなすと,4県のほとんどの自治体で住民は許容できないほどの人身雪害リスクにさらされている状況を可視化することに成功している。また,4県について人身雪害リスクと社会統計量との偏相関分析より,人身雪害が起こりやすい地域の特徴を,4県のうち3県であぶり出すことに成功している。これらの知見は人身雪害対策を高度化する上で重要な知見であり,学術的にも高く評価されるものである。

以上の理由により,本研究論文は平成29年度日本自然災害学会「学術賞」に値すると評価された。

学術奨励賞

受賞者
東京大学 松井 京子 氏
研究題目
量的降水予測とリスク評価に基づく土砂災害警報基準の検討
掲載誌
自然災害科学, Vol35, 特別号, 2016, pp.25-38.
受賞理由

本論文は,量的降水予報の不確実性を確率モデルで表現し,さらに警戒避難におけるコスト・損失評価モデルを導入し,これらを統合してシミュレートすることで,最適なリスク評価モデルやハザード評価の改善を提案したものである。現在,ハザード評価とリスク評価は,別々の専門家集団により行われているが,本来は一体として実施されるのが望ましい。現状では,降雨予報と土砂災害警戒情報までが気象庁の仕事であり,避難勧告・指示は自治体の管轄である。気象庁は自治体のローカルなリスクを把握しているわけではなく,自治体は気象庁が発する予警報の持つ不確定性を必ずしも理解していない。本論文は,降水予報とリスク評価を結合した警報発令基準を提案し,さらに予報精度の向上を加味したシミュレーションも実施し,その有効性を吟味しており,新規性に富む。本論文において最もクリティカルな点は,リスク評価をどのように行うかである。リスク評価としては動的最適化が最も有効との結論になった。しかし,それぞれの評価手法が持つ特性も議論しており,その議論は今後重要な指針として参考になる。 このような考え方は,他の災害にも適用可能であり,災害の特性に応じた警報発令基準の研究へと発展することも期待される。

以上の理由から,本研究論文は平成29年度日本自然災害学会「学術奨励賞」に値すると評価された。


これまでの受賞者一覧